2019.5.18
最近 ご父兄の方等から、どのようにレッスンを進めているのか、ご相談をいただく事が多いです。
あまりにも事例が多すぎて、少しずつ、書いていけたら、と思います。
まず、私はADHDや自閉症スペクトラム障害の方々と、生徒さん、個人的な方を含め、お付き合いをして15年以上になります。
皆さん、一人たりとも、同じ感性の方はいらっしゃらないです。
レッスンにおいて、この方法がよいから、これを、とか、あの方に有効だからこれで進める、というのは全くあてになりませんでした。
まずADHDの生徒さんの場合、アプローチが全く違うかもしれません。
今回は仮にAさんとしましょう。
Aさんに、教材を与え、音譜の読み方や、リズムなどを、順番に教えても集中がそれてしまうことがあります。
「Aさん、集中してください。がんばりましょうね」と言ったところで。Aさんは集中できません。
それどころか、Aさんは別のことをやりだしたりします。
これを、わがままととるのでしょうか?それとも、やる気がない、または、辛抱が足りないととるのでしょうか?
Aさんは普通なのです。
Aさんにとっては、世の中がそのように動いているのです。
私が正しくてAさんが間違っているわけではありません。
私はわたし、AさんにはAさんの世界があるのです。
しかし、そんなことを言っていたら、レッスンは進まず、困ったことになります。
私がまずしなければいけない事は、まずAさんと友達になることです。
場合によっては1年くらいかかる事もあります。
では1年経てば、Aさんは、はいはい、と私の言うことを聞いてくれて、レッスンは簡単に進むのでしょうか?
それも違います。
私はAさんの前に、お店屋さんのように、いろんなことを並べています。
それは、ピアノの教本だったり、リズム練習だったり、歌だったり、曲想の聴き分けだったり、曲作りだったり、音楽表語クイズだったり、いろいろなものが並んでします。
それを、私とAさんで半分ずつ選ぶのです。
お友達でない時は、Aさんは私の言うことを聞いてくれませんでした。
でも少しずつお友達になってくれたら、半分ずつになりました。
私は、ピアノを弾いてほしいので両手の本を選びます。
でもAさんはやりたくありません。
それでも半分こずつ、Aさんのやりたいこと、私のやりたいこと。をAさんはやります。
Aさんは、やりたくないことを、わたしのために集中して、がんばってくれたのです。
こんな嬉しい事はありません。
わたしはAさんに「あなたが、一番苦手なことを、わたしのために頑張ってくれたんだね。泣くほど嬉しい」
と伝えます。
おわかりかもしれませんが、Aさんのレッスンにおいて、一番大事な事は、この期間でどれだけ、ピアノが上達するかではありません。それは2番目です。
1番大事なのは、Aさんの視点で、音楽の楽しいことをやった。音楽でやりたくない事を自分の意思で選んでやった。なんでかわからないけど先生は喜んでいる。
Aさんを支配していないことが大事です。
だからといって、Aさんがわがまま放題を言っているのとも違います。
これが、まず、スタートかもしれません。
ADHDや自閉症スペクトラム障害をお持ちの方は、誤解されることも多くご父兄の方々など心を痛めておられる方も多くいらっしゃいます。
私は15年以上、いろんな彼らと関わってきて、彼ら、彼女たちが大好きです。
いろんな興味にすぐれ、不思議な感性を持ち、未知の才能を持つ彼ら、彼女らの将来が楽しみなんです。
確かに面食らうことも多い毎日ですが、私にいろんな事を教えてくれます。
今日はこの辺で。